開催報告 利活用部会第8回研究会「IoTのスマートハウス、スマートシティへの展開 〜居住空間から地域社会に至る、IoTにより環境見守りの事例を探る〜」

IMG_2567利活用部会 第8回研究会
「IoTのスマートハウス、スマートシティへの展開」
~居住空間から地域社会に至る、IoTにより環境見守りの事例を探る~
日時:2016年11月14日(月) 16:00-18:30
会場:明治大学 リバティタワー

 
去る11月14日(月)、明治大学 リバティタワーにて利活用部会 第8回研究会として「IoTのスマートハウス、スマートシティへの展開」を開催いたしました。事例を中心に、お取組みになられている各位からご報告いただきました。

■ゴミ収集車によるデータ取得からスマートシティへのアプローチ
〜日本式スマートシティ構築手法 -藤沢市を事例として〜
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任講師 米澤 拓郎 氏
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IMG_2525慶應義塾大学と神奈川県藤沢市は連携協定を結び、2013年1月から地域における環境モニタリングという目的でゴミ清掃車に環境センサーを取り付け、実証研究を行っています。この実証実験に携わられた慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任講師・米澤拓郎氏が概要をご紹介くださいました。

藤沢市では、収集日の朝に住居前の道路へゴミを置いておくと収集してもらえる、全戸収集を行っています。ということは、ゴミ収集車は人の住んでいる道路はすべて走行していることになります。そこでゴミ収集車にセンサーを取り付けることで、人が住んでいるすべてのエリアの様々な情報、たとえば気温や明るさ、騒音、花粉、PM2.5、ごみの量、カメラを通じた道路の状況(凸凹や白線のかすれなど)などを収集することができるようにしました。ただし、データの送信は、ゴミ収集車からサーバーへ1日に1度送信するような仕組みにしているので、時間的なデータは取れていません。とはいえ時間的な変化などは、その他の技術で補完する方法も考えられるでしょう。時間差で取得したデータから予測値を出すなどの工夫です。

そしてIoTというと、どうしてもセンサーなどのハードウェアがその役割を担うと思われがちです。スマートシティを実現するための情報源は、それ以外にも様々な方法が考えられます。たとえば、“人”も重要な情報源です。たとえば、千葉市では「ちばレポ」というアプリを市民向けに無償提供し、このアプリを通じて街で見つけた「”こまった(>o<)”レポート」を市民から情報提供してもらう仕組みを整え、運用しています。米澤氏らも、ちばレポを踏襲した藤沢市独自の課題収集用アプリを構築し、藤沢市職員による情報収集を開始しています。

米澤氏いわく、
「ゴミ収集車に搭載しているセンサーをはじめ、その他各所の物理的なセンサーのほか市職員や市民などから収集されるデータ、Webから得られるデータなどを合わせると500,000ほどのセンサー数(情報源)になり、1つのセンサーが同時に多数のデータを取得できるため、データ数としては5,000,000ほどのデータストリームになり、さらにそのデータ量は1日20GBにもなります。こうしたデータを共有するプラットフォームを作り、公開を始めています」

「こうしたスマートシティの取り組みは、大学と自治体など、1対1の関係で構築され推進されるケースが数多く見受けられます。そうしたものが同時並行で動いていたり、あるいはプロジェクト連携ができていなかったり、こちらで作られたデータが別のところで活用できなかったり、そうした残念なケースが多々あります。そこで相互に協力しやすい枠組みとしてコンソーシアムを形成し、自治体からはフィールドを提供してもらったり、企業側は技術を提供してもらったりして一緒にビジネスを考え、社会実装まで考えるというような地域を対象としたIoTによる情報収集とデータの活用、技術に関する共同研究と社会実装の推進というのを行いたく、コンソーシアムを立ち上げました。」

「今後期待される「IoTとスマートシティ」は、そこに住んでいる人たちがしっかりデータを収集してきて、それを周辺の自治体と共有して活用しなくてはならない、そういう分野だと考えています。そうすることによって日本全体の情報を使った新しい産業を構築していけるのではないかなと考えている。これまでの藤沢市との取り組みで、なんとなくできるのではないかというのが見えてきたところです」(米澤氏)

■仙台市グリーン・コミュニティ 田子西のスマートシティと行動履歴データの活用
〜震災復興住宅、住民コミニティの健康管理へのアプローチ〜
国際航業株式会社 新規事業開発部 新規ビジネスグループ長 藤原 康史 氏
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レイ・フロンティア株式会社 取締役 CCO 澤田 典宏 氏
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IMG_2536仙台市郊外の田子西地区では、現在開発が進行中のニュータウンです。仙台駅の北東約7kmに位置する16.3haのエリアで、当初計画では商業地が中心になる予定でしたが、この改良の途中で東日本大震災が発生し住宅を失った人たちが住む街として復興公営住宅を誘致することになりました。現在「グリーン・コミュニティ田子西」として1500〜1600人の人たちが生活しています。この街づくりに、ロボットやIoT、センサーを使った街づくりや健康づくりの開発も行っている国際航業が携わっています。

まず、国際航業株式会社 新規事業開発部 新規ビジネスグループ長・藤原康史氏より、この田子西の「地球温暖化」「超高齢化社会」「地域活性化」という3つの社会課題を解決することをコンセプトとする街づくりについて概要の説明がありました。

そして形成しつつある地域コミュニティの協力を得て、健康増進に向けたスマホを活用した実証実験を展開しました。スマホを使うことで健康増進に向けた行動変容が可能かどうかという実証実験です。実験には、レイ・フロンティア株式会社が参画し、同社のライフログアプリ「SilentLog」を活用して行われました。この「SilentLog」ですが、アプリを起動して持ち歩くだけで移動手段、距離、時間、歩数、滞在場所を自動で記録してくれるものです。カメラで写真撮影すれば、その行動履歴上に画像がマッピングされていきます。

IMG_2546今回取り組まれた実証実験はこのアプリを用い、地域に在住するシニアの行動履歴を把握するとともに、このアプリを通じて健康につながるような行動変容を起こせるかどうかということを試みたものです。

レイ・フロンティア株式会社 取締役 CCO・澤田典宏氏によれば、参加者の意識こそ高かったはずなのに完遂率が40%にとどまってしまうという結果に。これは想定外のトラブルも少なくなく、何より高齢化が進んでいた田子西住民の方々の多くはスマホを使いこなせていなかったという問題がありました。そこで澤田氏は、使い方はともあれ「充電して電源を入れて常に持っているだけで良い」というお願いをし、実証実験のフォローを続けていきました。結果的に、完遂率は40%でしたが、この40%の人たちの継続率は94%となり、そのうち60%が歩数増につながりました。スマホを必ずしも使いこなせていなくても、「意識させるだけでも行動は誘発される」ということが分かりました。

■スマートハウスからスマートシティへ
〜奈良先端大学学内のスマートシティ実験と近隣自治体との共同研究から〜
BBA理事/奈良先端科学技術大学院大学 ユビキタスコンピューティング研究室 准教授 荒川 豊 氏
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IMG_2555奈良先端科学技術大学院大学ユビキタスコンピューティングシステム研究室では、これまでにスマートハウスやスマートシティの実現に向けた様々な取り組みをしてきました。その中心となって活躍しているのが、BBA理事で、同研究室の准教授である荒川豊氏です。荒川氏の研究室では、これまでスマートホームの実現に向け、家庭内のセンシングに取り組んできました。なんと、大学研究棟の一教室の中にごく普通の1LDKの部屋を竣工してしまったのです。研究室に入るといきなり住居の玄関が現れます。玄関ドアを開けて靴を脱いで上がると、洗面所、バス、トイレがあり、リビングダイニングへ。

実際に、このスマートハウスの中ではドアや引き出しにモーションセンサーが設置され、料理をするときにどの引出しをよく空けているかといった情報や、家に帰ってきて冷蔵庫が何回開けられたかといったデータを収集したり、水栓の動きを検知するセンサーを使って水をどのぐらい使っているかというデータを取得したり、電力消費については30秒に1回電力センサーを用いて計測したりしています。さらに光や温度、湿度などを集めるセンサーのほか、部屋の中の人がどの場所に居るかを測定するセンサーなども設置されています。

このスマートハウスを使った実験の一つの目的は生活行動を認識です。実験に協力しこのスマートハウスに暮らした学生が記録した行動内容と、センサーから収集して行動認識したデータを突き合わせ、どの程度の認識精度があるかを分析しました。その結果、テレビ視聴以外はかなりの精度で認識できることが分かりました。テレビ視聴の場合、いわゆる「ながら視聴」によって複合的な行動がなされていることから精度が落ちる傾向にあるようです。

こうして宅内での行動をセンサーで予測する成果の応用例として、地域のデイケアセンターと連携し、その施設内各所にセンサーを設置。これにより施設利用者個々が何をしているかという行動を自動収集し、それまで手間がかかっていたケアレポート作成を自動化するという実証実験を行っています。

このほかにも荒川氏らは、カーシェアリングシステムの実証実験も行っています。カーシェアリングはスマートフォンで予約管理し、スマートフォンを通じて車両のロックを解除し借り出すというシステムですが、目指していることは「乗り捨て型」のカーシェアリングを実現させる実験です。課題は、乗り捨てようとしたときに駐車スペースが無かったとか、借りたいときに車が無かったといったような、需要と供給のバランスが崩れる問題です。これを情報と、情報によって起こる行動変容で解決できないかというのが研究の狙いです。

IoTによる収集データでパターン学習を続けていくとしてくと、様々な問題の解決の糸口が見つかります。そうした課題を情報を用いた行動変容を促すことで解決していけるのではないかというのが、荒川氏たちの狙いです。

 

<記事掲載>
・POSTCO Lab. 慶應義塾大学×藤沢市のIoTとスマートシティに関する取り組み|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

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