開催報告 利活用部会 第9回研究会「ICT利活用による業務大改革! -大企業、自治体はICTをどう受け止め、業務改革していかなくてはならないかを議論-」

利活用部会 第9回研究会

「ICT利活用による業務大改革!」
-大企業、自治体はICTをどう受け止め、業務改革していかなくてはならないかを議論-
日時:2017年7月10日(月) 15:30-17:50
会場:TKP浜松町ビジネスセンター

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去る7月10日(月)、TKP浜松町ビジネスセンターにて利活用部会 第9回研究会として「ICT利活用による業務大改革!」を開催いたしました。今回は「業務大改革」という観点から、大企業や自治体においてICTをどうとらえ、活かしていくべきかを神奈川県CIOも務められた未来戦略研究所代表取締役・根本昌彦氏、実際にICTを有効活用し業務改革を実践された佐賀県政策部企画課企画担当係長・円城寺雄介氏にご講演いただきました。

■ご講演(1)
「企業や自治体でのICT利活用による働き方改革」 -神奈川県での経験を踏まえて-
 株式会社未来戦略研究所 代表取締役/元 神奈川県CIO 根本 昌彦 氏

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本日のテーマである「働き方改革」という観点から、本日お話させていただくポイントは3点。まず神奈川県庁の業務に1,620台のiPadを導入したがその経緯やどうやって導入を進めていったかという話題、そしてiPad導入は一手段に過ぎず、その先に目指しているスマート県庁改革と行政改革の話題、そして3つ目は県庁の内部だけの改革にはとどまらず、県全体をどうするかという点が一番重要で神奈川を今後のようにスマート化していくかをお話させていただきたい。

神奈川県では2014年6月からiPad(LTE対応)を1,620台導入(現在は2,220台)している。この1,620台は知事以下、主幹級以上の職員に配布し、徹底的に活用してもらうことにした。知事自身が活用を奨励し、政策会議等はペーパーレスを実現していこうとした。トップの会議体がiPadを活用したペーパーレスを推進すれば、下の会議体もやらざるを得ない状況を作っていった。

神奈川県CIOに着任後、まず知事、副知事を含め現場との情報の共有化を行う必要性を感じた。以前は個々人のスケジュール状況すら、紙ベースで情報交換を行っていた。「知事の本日の予定」が各部署にペーパーで配布され、スケジュール変更などが生じれば、修正したスケジュールを再配布していた。そんな旧態依然としたことがまかり通っていた。そこで既存グループウェアをiPadと接続してリアルタイムに最新情報を共有できるようにし、これによって情報を落としてしまうことによる機会損失の削減を目指した。

予算のない中でどうやって導入したか? まずCIOに就任して、県庁で使用している電話代に目を向けた。固定電話代、携帯電話代は県の施設ごとの随意契約になっていて、年間約4億円の費用が掛かっていた。これを一括契約にしただけで年間2.7億円に抑えることができた。さらに、県庁内で使用している紙代も圧縮することにした。購入している紙の量と、シュレッダーにかけられた紙の量を計測したら、およそ60%がゴミになっていることが分かった。iPadでペーパーレス化できればこの部分の経費が削減できる。ただしいきなり60%の削減は難しいであろうから、まずは30%を削ることで、これだけで2,500万円を確保できた。合わせて1.5億円をiPad導入等の情報化投資に回すことになった。

導入効果だが、省力化効果合計で42,000時間/年、人件費に換算すると1億7,400万円となった。iPadの年間運用費が7,000万円掛かっているが、それを差し引いても1億円の効果が出た。

情報共有やペーパーレス化はもとより、テレワーク=モバイルワークの積極的推進により、以前は多かった「メールをするために外出先から県庁へ戻る」といったこともなくしていった。さらには、幹部職員のフェースツーフェース(対面)を絶対視する常識を崩させることができた。フェースツーフェースこそ時間がかかり意思決定のボトルネックと言える。民間企業では経営者層の意思決定にチャットも使われる時代であるが、県庁にはこうした認識が薄かった。

また、育児休暇を取得している職員や、他の機関に出向している職員等にも希望者にiPadを配布してみた。これにより長期間職場を離れた場合でも県職員の動きが見え、繋がり続けていることでスムーズに復帰できる。

続いて、スマート県庁改革について説明したい。神奈川県では現知事が就任後、「電子化全開宣言」として5カ年計画を打ち出している。この計画は私が作成したものである。県庁内の業務をすべて電子化していくための5カ年計画ということである。

タブレットの導入はモバイルワークを実現するというのが大きな目的であった。同時に従来の仕事のやり方、すなわちワークスタイルを変革していくきっかけにしたかった。2014年度からの5カ年計画で、「職員の意識改革」「BPRの推進」「制度の見直し」「情報と知識の共有化」「ICTの整備」という5つの観点から改革を行った。やはり意識改革や成果の見える化というあたりが改革上難しいと感じられたところである。

なかでも自治体という立場において組織が硬直化してしまっているところに大きな課題を感じた。仕事のやり方を見ていると、上から落とされてきた仕事に対してWhyを感じないまま、How(作業)から始めてしまっている。また人員や予算など削減一辺倒で、仕事は減らないために行政改革疲れが出てしまっている。意欲も減退してしまっている。

たとえばビジョン策定するといった場合、これまでは知事が「理念」を打ち出せば、それに基づいて現場各所で「計画」に落とし込んでしまう。しかし、これこそ各現場でどのように実現するか(How)に時間を割いているだけ。知事が掲げた「理念」に対して「ビジョン」(Why)を考え、その上で「戦略」(What)を練ってから現場に落とし込んで「計画」を練っていくべきである。

最後に、県全体の方向性を示したい。神奈川県全体のICTを活用したエネルギー、医療・ヘルスケア、安全安心、防災、観光、教育等に関するスマートリージョナル構想を「スマート神奈川」として掲げ、取り組んでいる。ICTでシステムを作ることは手段に過ぎない。収集可能なデータを個人情報が出ない形に加工し、これをビッグデータとして蓄積させていく。このビッグデータを活用するエコシステムを官民連携で作り、サービスの生産性を高め新規価値を創造することが目的である。

データの中でもとくに私が力を入れたいのがヘルスケアや医療の分野で、神奈川県ではこの分野を「未病」と名付け、国家戦略特区も活かして推進を図っていく。健康医療介護分野へのICTやIoTの適用は重要なものと考える。

本当の働き方改革とは、残業縮小根性論ではない。仕事量を可視化し効果測定をし、無駄な仕事は捨てて改善していくこと。思い切った断捨離が必要。モバイルブロードバンドを上手に活用し、机ではなく現場で仕事をすること。時間や費用のコスト削減のみならず、ICTを活用して外部資源と連携して付加価値を高める作戦を立案し実行すること。何よりICTはコストではなく投資である。

■ご講演(2)
「ICTによる業務改革の本質」 -救急災害現場から役所の机まで、実例からの報告-
 佐賀県 政策部 企画課 企画担当係長 円城寺 雄介 氏
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佐賀県におけるICT利活用であるが、業務の色々なところに有効に取り入れている。まずは救急医療の分野。2011年4月から県内の救急車すべてにiPadを配備している。iPadを救急医療現場で使うというのは国内では初めての事例として注目された。また同年の秋からは県会議員も全員がiPadを持ち業務に活用するようになった。県庁職員も活用が進んでいる。佐賀県庁職員数は約3,000人で、その中で1,000台のiPadを中心としたモバイル端末を配布して活用している。

iPad等を使った業務における情報の見える化は、たとえば関係職員のスケジュールをグループウェア(Outlook)上でお互いに確認できる状況になったため、これまで様子を伺いながら調整していた上司へのアポイントもオンライン経由で簡単に申請できるようになった。また机の上と同じ環境での作業がiPad等で可能となり、場所を選ばずに仕事ができるようになった。

今日はまず救急車の話から。

1999年の消防庁の統計で、救急搬送に要する時間は27分かかっていた。これが2013年には39分まで伸びている。救急医療を取り巻く環境は、わが国においては年々厳しいものになっている。これは佐賀県など地方だけの問題では?と考えた方も多いと思う。しかし全都道府県のうち最も搬送時間がかかっているのは東京都であり、決して地方の問題ではなく日本中の問題である。

主な原因としてそもそも救急車で搬送される人の数が増加している。2000年の救急搬送された人の数が全国で399.7万人だったものが、2013年には534.0万人まで増加した。佐賀県も2000年で2.2万人だったものが、2013年には3.2万人と1.5倍ぐらいになった。これを受け入れる救急車の数はあまり増えていない。救急指定の病院の数に至っては減っている。

私は2010年に医務課に配属された。ただでさえ業務が多い過酷な職場であったが、救急車に同乗して現場の状況をみたことで配属されている間に何か1つでもいいから救急現場を良くしたいと考えた。

公務員も多くの職員は仕事のやる気がないわけではない。しかし、何から手を付けてよいのか分からないケースが多い。こうした壁にぶつかったときに私は先人の知恵に頼る。佐賀県の先人たちはどうしたか。じつは佐賀は幕末の時代から他とは違う考え方を持っていた。その原点は「目的のためにタブーを恐れない」ということ。学ぶべきところは学び、良いものはどんどん取り入れる。また現場主義という考え方もあった。

そこで、救急搬送の時間を短縮するために、まずは現場を知ろうと救急車に乗せてもらうことにした。

そこで明らかになったことが「病院の情報がない」ということだった。患者を搬送するのに、救急隊員は経験と勘を元に、病院に片っ端に電話をかけている姿を目の当たりにした。2010年といえばインターネットも十分に普及し、ホテルでもレストランでも、検索してオンライン経由で予約できるという時代にあって、救急医療の現場は昭和の時代から何も変わらないやり方を続けていたのだった。

これこそ、救急車にiPadを配備して情報の見える化をすれば現場は少しでも改善できるのではないかと事業企画を提案した。ところがこれに猛反発したのが佐賀県庁であった。知事のマニフェストにもないし、県や市町村の総合計画にも救急医療現場のICT化などは一言も書いていない。それを何の権限もない一担当の職員が何を言い出すのかと。

まずは事業予算を管理する財政課が大きな壁だった。財政課が悪いわけではなく、このご時世に新規予算が付けられないのは当たり前だ。そこで知恵を絞った。なにか使える事業や予算はないか・・。
見つけたのは、当時ほとんど利用されていなかった「病院の空いているベッドの数を共有するためのシステム」だった。そのシステムの運用費を見直した。以前は年間6,700万円かかっていたが、これを最新のクラウドシステムで見直したら2,000万円に引き下げられた。年間4,700万円のコストダウンになる。この浮いた費用でiPadの導入やその運用費用をまかなえる見込みが立った。

佐賀県から始めた救急医療現場でのICT活用は現在、10の府県で導入済み、19の県で検討中、そして13の都道県で一部導入済みあるいは導入予定となっている。近い将来、救急車でスマートフォンやタブレットが当たり前のように使われるようになることは疑いないだろう。

他県の導入事例として、たとえば群馬県では1日あたり受け入れ不可の数が100件を超えていたが、導入後は30件まで減った。

この仕組みを導入した時の工夫としては病院ごとの救急車受入の件数を関係者みんなで「見える化」をしたこと。そして受入件数の多い、つまり頑張っている病院が上位に表示されるようにしたこと。

これにより行政、病院、医師会、消防という異なる組織が同じ情報をリアルタイムで確認することができるようになった。これにより関係者の意識が疑心暗鬼の状態から脱却し、共通の課題を再度認識して協力する雰囲気がさらに醸成されることになった。

救急車以外にも、佐賀県では積極的にICT活用を進めてきたが、それによって大きく変わった点が3つある。1つ目はデータで政策が変わった。2つ目はタブレットで働き方が変わった、3つ目はICT活用で地域が変わったということ。

タブレットやICTをやりたかったわけではない。現場でお互いに情報が見えず疑心暗鬼で仕事をしていた。その手段としてタブレットやICTが有効であったからツールとして使っただけ。

データが蓄積されていくと、そのデータから色々なことが見えるようになってきた。たとえば搬送実績のデータを分析していくと、搬送される方は高齢者が多いことや、入電の時間帯は日中8時〜20時の間で多いといったことが見えてくる。こうしたデータをみんなで見て、解決を考えていくことが重要。その結果、佐賀県でのドクターヘリ導入につながっていった。これが政策につながっていった事例。

またタブレットを導入したことで、救急隊員の仕事のやり方に変化が出てきた。そのことをヒントに佐賀県庁にもタブレットを導入して働き方改革を行った。そのときに工夫したことは、タブレットの使用を強制してもいい成果は出せない。そこで逆に全庁各部門からどのようにタブレットを活用したいのかという提案を上げてもらう企画コンペ形式にし、有効活用できると思われるところから配備を進めていった。あえて不平等にすることで活用事例をつくり、配備された部署もあまり使われてないなら次の部署が手ぐすねをひいてまっている状態をつくることで、ボトムアップ型で働き方改革ができるようになった。

このように見える化やデータ、仕事のやり方をICTで変えたことで佐賀という地域も変わってきた。
現在では、福祉、教育、農業、土木などいろんな部門でICT活用がなされており、職員の働き方改革が地域の行政サービスの向上につながるような事例も出てきている。

私のこれらの実践から、「現場主義」「草莽崛起(そうもうくっき)」「共感」の3つをお伝えしたい。ICTというツールに振り回されないためには現場のことを第一に考えたものにする、誰かがやってくれるだろうではなく気づいた名もない草のような人間が立ち上がって実現するから世の中は変わっていく、強制や利益ではなくやろうとしていることに共感してもらう、これは人がもっとも能力を発揮する瞬間は内生的に自分からやりたい!と思うときだから、それを引き出すためのワクワクやドキドキが必要。

私自身も現在は県庁の仕事をしながら、総務省地域情報化アドバイザーとして日本各地のICT活用を進めている。さらにはドローンやIoTをもっと活用したいと思い、一般社団法人EDAC(読み:イーダック)を設立し副理事長兼CEOとして活動を行っている。

前例のないことをやるのはリスクもあるし勇気も必要だが、やっていると今日のように参加者の皆さんとも交流ができ、新しい情報も手に入れることができる。なにより自分の世界も広がってとても楽しい。著書「県庁そろそろクビですか?」にも書いたが、これからは従来の「組織の中に取り込まれた個人」から「組織からはみだし、主体性を持って行動し成長することで組織内外に貢献できる個人」への変化が求められる。私は「ICTによる業務改革の本質」はそこにあると考えており、今日の講演がそのきっかけの一助となれば幸いである。

 

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